育児について
最近「少子化」が問題にされ、その対策についてさまざまな提言がなされていますがいっこうにストップはかからないようです。安心して子どもを生み育てる環境づくり、子育て不安解消の支援、助言などを含め少しお話してみようと思います。発達、生活の問題、身体についての心配点の順にすすめていきます。今回は乳児期の発育、発達を中心にお話します。

1.身体発育

母子手帳にあります体重、身長発育パーセンタイル曲線にお子さんの体重、身長をプロットしてください。 3〜99パーセンタイルの間にあれば心配はないでしょう。乳児期の体重は出生体重に影響されます。乳児期は下痢などで一時的に数パーセント減少する以外常に体重は増加します。増加するカーブをたどり増加不良や減少があるときは医師を受診しましょう。生後1カ月までは1日30〜40g増加し、生後4ヶ月の時点までも1日20g以上の増加を指標としてよいでしょう。乳児期の肥満は80%は幼児期以降に自然に解消します。

2.精神面の発達

3〜4ヶ月で首が据わる。6ヶ月でお座りができる。1歳ごろつたい歩きができる。1歳で意味のある言葉を話す。18ヶ月で簡単なお手伝いができる。母子手帳の各月の欄には運動機能、知的面での機能獲得おくれがないことをチェックするようなされています。正常児でも知的あるいは社会的機能(例えば「バイバイをする」など)をおなじ月齢で獲得するわけではありません。機能獲得の時期には幅があります。また、精神発達にはそれぞれの個性・特徴があり多様性が大きく、ある時期の「おくれ」は必ずしも異常と言えないこともあります。乳幼児期に精神発達のおくれは一時期のおくれで年齢とともにキャッチアップする例も多いようですが、一部に何らかの疾患を有する例もあります。

3.心理面の発達

達乳児期の心理面の発達の過程を適切に経ないで発達した小児は学童期・思春期に様々な「こころ」の問題・行動上の問題(心因反応・不登校など)生ずる危険性が指摘されています。母親が子供の働きかけに対して、適切に母親らしい行動、つまり母性で対応することにより、子どもは母親に対して安心感、信頼感をもつようになります。この信頼感は、子どもへの語りかけやスキンシップも重要な役割を果たしています。子ども心の中にこのような信頼感が育たないと、思春期以降に不安感が生じ様々な問題行動の原因となります。

4.栄養と食事

A.新生児・乳幼児早期
新生児は哺乳の機能は出生直後からあります。乳首が触れるとくわえ、吸い込み、飲み込む、という本能的な反射運動によって哺乳を行っています。2〜4ヶ月になると空腹感により乳児は意識的に乳首にくいつき、満腹感を自覚するようなり、自分から哺乳を中止します

B.離乳期
生後4ヶ月頃までの乳児は、固形物を口の中に入れると、舌でこれを外に押し出す反応がみられます。この反射がきえますと物を噛もうとする運動が出てきます。離乳は4ヶ月頃より開始するのがよいというのはこのためです。6ヶ月頃になると歯が生え始め、これを機に乳児は形のあるものを口に運び、歯茎や歯を刺激することを好むようになります。適切なときに離乳を開始しないと乳汁以外の食物に対して興味を失い、離乳の開始が困難になります。7〜9ヶ月頃になると噛む運動ができるようなります。かむことによって、食物の感覚を体験し、食物を細かくすりつぶし、唾液が食物と混ざり、味覚が起こります。また消化液の分泌を促し胃腸の動きも活発になります。1歳半頃臼歯(奥歯)がはえると固形物を上手に食べられるようになります。最近、保育園や幼稚園で硬いものがかめない、食物をかまずに飲み込むなど、食事とる機能の低下が問題になっています。このようなトラブルを予防するためには、まず、離乳を子どもの発達に合わせて適切に進めることである。

5.排泄

おおまかに言うと、1日に作られるおっしこの量は、1日に飲んだり食べたりして摂った水分の量から、汗以外の見えない形でからだの外へ出て行った水分量とウンチに含まれる水分の量を差し引いた量といえます。ですから暑い日や病気で熱がでているときなどは尿の回数や量が減ったりします。でも、人間の体の水分バランスを調節する仕組みは、体内の様々な環境の変化にある程度柔軟に対応できるようになっています。ひどい下痢、嘔吐で脱水をおこすことがあります。とくに乳児期に発症するロタウイルスによる胃腸炎は要注意です。
あと、便について2〜3お話します。1日に出るウンチの量は体重1Kg当たりわずか5gですが、ウンチの形を作っているのは、食べ物の中の繊維分です。完全に近い離乳食にたどりつくまではオムツにわずかの固形物を残し水分はしみ込んでいるということがあっても心配ありません。次にウンチが緑色で心配と訴えて来院するお母さんが時々いますが便に含まれる色素ビリルビンが酸化して緑色に変わったためで乳児期には生理的な現象です。
次に単一症候性下痢について。しばらく下痢が続き前進状態が良好という状態で、脱水をおこす下痢症と区別されます。体重をチェツクして離乳食のレベルはすすめないようにてください。下痢止めを使わなくても治ってしまうことが多いです。最後に、便秘について。軽いものは食事などで改善します。ある程度慢性化して肛門の充血、腫脹、裂傷など苦痛を伴うようなら医療機関の受診が必要となります。

6.泣く

「赤ちゃんは泣くのが仕事」とよく言われますが、泣くという行動は乳児にとって唯一のコミュニケーションの手段です。新生児、乳児が泣くことは生理的なことで、2〜3ヶ月をピークに減少するものです。
A泣き止まない児に対するアプローチ
一般に泣くのは何か不快なことがあるためで、おなかがすいている、おむつが濡れている、など理由が解っている場合は心配ありません。鼻づまり、かぜ、中耳炎にかかっていたり、腸重積やそけいヘルニヤなど救急を要することもありますので注意しましょう。
B夜泣き
夜泣きは2〜3ヶ月から1歳半までにみられます。6ヶ月頃になると運動発達とともに情緒面の発達もさかんで周囲の環境や人とふれあいに影響され始めると考えられています。昼間の刺激が強かった日は夜泣きがひどいようです。対策として昼寝、お風呂も含めて規則正しい生活のリズムをつくりましょう。夜泣きが始まったら、背中を軽くたたいたりさすったりしてもう一度眠れるようにしてください。一番大事なことはお母さんが穏やか気持ちでいることです。

7.睡眠

睡眠は量ではなく質が重要です。大体1歳で11〜13時間とされています。昼寝はしてもしなくてもよいです。乳児にとって眠りは親からの別れであり、自分が守られているという安心感があってこそ眠りにつくことができます。日本の添い寝は甘えを助長させるとされていましたが最近見直され、むしろ添い寝をすすめる先生もいます。
それから、うつぶせ寝について。①うつぶせ寝は安静が保てよく眠るという利点があります。②柔らかい布団は窒息の危険があります。③あおむけ寝に比べて乳児突然死症候群の発生が高まるといわれています。乳幼児突然死症候群についてお話します。これは睡眠中に呼吸が止まり死いたる怖い病気です。原因として胃酸が気管に逆流して無呼吸となったり、風邪による鼻づまり、うつぶせ寝が報告されています。
厚生労働省は、①うつぶせ寝②人工栄養③保護者の喫煙が乳幼児突然死症候群の危険を高めるとして育児習慣などについて全国的なキャーンペーンをすすめています。うつぶせ寝が好きという場合は硬い布団にしてそばを離れる時はあおむけ寝にしましょう。

8.歩く

まず、歩行の前の身体の移動として這い這いについて。這い這いは、早い子では6ヶ月頃から、10ヶ月では大半の子どもはが這い這いします。でもうつぶせが嫌いな赤ちゃんは、寝返りでうつぶせになるのが遅くなって這い這いが遅れますが心配ありません。
また、這い這いをしないでお座りの姿勢でお尻と足でこぐようにして移動する赤ちゃんがいます。いわゆるい ざって動くといわれますが、こうゆう赤ちゃんは歩き始めはが1歳半から2歳と遅れることが多いようです。でも歩くようになります。這い這いをしない赤ちゃんの大半は心配はありませんが、なかに精神発達の遅れや筋肉や精神の病気のこともあります。這い這い以外の発達もおくれているようなら専門医の診察を受けてみたほうがよいでしょう。這い這いにもいろいろな形があります。お尻を持ち上げてひざをついて這う「高這う」が一番ポピュラーですが、その他、両方の手のひら、足の裏の4点支える「熊さん型」片足だけで進む「片足型」などありますが、赤ちゃんの個性でいずれも異常なものではありません。
次に、歩行について。9〜10ヶ月頃から、テーブルなどを支えにひとりで立ち上がるようになります。一般に体重の大きな赤ちゃんはひとり立ちが遅い傾向があります。ひと歩きは10ヶ月から18ヶ月の間にできるようになるのが普通です。やせた赤ちゃんほど歩行開始は早いようです。何らかの理由で遅れても2歳頃には歩けるようになることが多いものです。つま先立ち歩く赤ちゃんが時々います。だんだん治ってきます。足首を90度に曲げてみて抵抗なく床につくようなら問題ないでしょう。それから歩き始めの赤ちゃんは転びやすいです。平衡感覚が十分発達していないことと、頭が相対的に大きく重心が高いことが原因です。転ぶ際に気を付けおかなければならないことがあります。
箸、鉛筆、歯ブラシなどをくわえて前のめりに転倒すると、これらとがったものが軟口蓋(上顎)を突き破って頭蓋底にささってしまう危険があります。これはPencil injuryとして有名なもので、生命の危険があります。私も3例ほど経験がありますが直ちに脳外科での手術が必要とされます。また、食物を口に入れたままでの転倒も危険です。ピーナツやりんごの破片などの誤飲による窒息事故がよくみられます。食べ物や箸などを口にいれたまま歩くのはやめてください。

9.ことば

ことばは、人だけが持つ特有のコミュニケーションの手段です。言葉は普通1歳ごろから発せられるようになります。それまでの1年の間にたくさんの緻密な準備が乳児の体の中で進行しています。お母さんから言葉のことで一番多く相談されるのは2歳〜3歳になってもしゃべらない、いわゆる「言語発達遅延」です。言語発達には、個人差があり意味のある言葉の出現が遅れていても、ある程度様子を見てよい期間はありますが、2歳半をすぎても発語が無い時は、専門家を受診するようにしましょう。言葉の遅れの原因はいくつかあります。耳のきこえが悪い難聴によるもの、知的発達の遅れによるもの、脳性麻痺に伴うもの、自閉症によるものなどありますが、原因によりその後の対応の仕方が違ってきます。

乳幼児のテレビ・ビデオ長時間視聴は危険です

最近、小児科医や発達の専門家から、言葉の発達や社会性の遅れがある幼児の中に、テレビ・ビデオを長時間視聴しており、テレビの視聴を止めると改善が見られることが報告されました。テレビの長時間が発達に悪い影響を及ぼす可能性が指摘され、日本小児科学会こどもの生活改善委員会では、テレビと発達への影響を検討するため、3地域の1歳6ヶ月健診で1900名について調査しました。この結果、長時間の視聴は1歳6ヶ月時点に意味のある言葉の出現の遅れる率が高いことと、このようなテレビの影響に親が気づいてないことが示されました。現代社会は、核家族化などで家庭内の会話が少なくなり言葉の発達に問題を持つ子供の増加が予想されます。乳幼児期は言葉の発達に重要な時期であり、テレビ視聴の影響について、親も社会も認識して対応していく必要があります。

外出について

赤ちゃんの生活の問題につてもう少しお話します。赤ちゃんの外出。外気浴は外出の準備です。外気に当てることで皮膚や気道粘膜を除徐々に鍛えてくれるので、赤ちゃんが外出する前に必要でしょう。生後1ヶ月頃にたったら、部屋の窓際で外からの風を入れてあげましょう。1〜2週間してなれてきたら、ベランダや庭に出てみましょう。3ヶ月過ぎたら30分〜1時間散歩しましょう。
つぎベビーカーについて。ベビーカーは寝かせた状態でも使用できるA型と座った状態で使用するB型があります。A型の場合には首が座り始める2〜3ヶ月から使用できますがB型はお座りがうまくできる7〜8ヶ月から使用できます。つかまりだちの出来る頃になるとベビーカーからの転落や転倒事故が増えるので、十分な注意が必要です。車にのせるときは月齢にあったチャイルドシートをえらびましょう。4ヶ月くらいまでは背もたれが45度程度に寝ているタイプを用いて、赤ちゃんのお腹や首に圧迫がないか確認しましょう。少なくても1歳までは後部座席に後ろ向きにこていしましょう。そして備え付けのベルトでしっかり固定しましょう。

予防接種について

最後に予防接種について。で予防接種には集団接種と個別接種があります。おおぜいの赤ちゃんを集めて一度に接種するのが集団接種です。これにはBCGとポリオがあります。今日皆さんはBCGをこれからうけられると思います。昨年から決まりがかわりまして、今まで小学生と中学生にも接種していましたが乳児1回のみとなりました。ですからかならずして受けて下さい。その他1歳以下で受けるべき予防接種はポリオ、三種混合(百日咳、破傷風、ジフテリア)です。先程もいいましたがBCGとポリオは集団接種ですので優先してください。DPTはかかりつけの先生に1歳までに3回接種してもらい1歳になったら麻疹をしてもらいましょう。麻疹はかかると高熱、咳、発疹、下痢、嘔吐などの症状が続き続きつらく重い感染症で肺炎、脳炎、中耳炎の合併もあります。2歳以下では入院に至るケース25パーセントとかなり高いです。千葉市の接種率は95%で比較的良いのですが1年に約100名ほど発症し小流行はみられます。3歳までに風疹、おたふくかぜ、水痘、DPTの追加をうけておくと良いでししょう。ホームドクターに相談しスケジュールをたてましょう。

遊びについて

子供同士が一緒に遊べるようになるのは2歳過ぎてからです。それまでは、お互い興味はあっても遊びはひとり遊びです。むしろお母さん同士の付き合いが主流で、お母さんがたのそばにいた乳児や1歳児がおともだちになるということです。いわゆる公園仲間作りということでしょう。またお仕事をもったお母さんからよく「忙しくて子供と遊ぶ時間が十分取れないのですが」という声を聞きます。悩む必要はありません。保育園にお迎えに行った時ぎゅと抱きしめてあげてください。母と子の絆はいる時間の長さではありません。
帰宅後ゆっくりお話をしながらご飯を食べたりお風呂に入ったり歌を歌ってあげるのもお子さんにとって素敵な遊びなのです。次おもちゃの選び方について、それぞれの子供の発達段階にふさわしいおもちゃを与えることが大切です。
6ヶ月ぐらいまで
まだ自分でおもちゃを使って遊べる時期ではありません。ベットメリーをとりつけたり、ガラガラを握らせたり、音のする起き上がり人形を触らせたりしてあげて下さい。 0歳後半
おすわり、はいはい、たっちとどんどん運動機能が発達します。おもちゃもしっかり手に持てるようになってきます。色々なものをさわって口に入れて、といういじり遊びが主体などで、色々な色、形、材質のものを周囲に揃えてえてあげて下さい。お誕生日が近づいてくると出したり入れたり引っ張ったりという遊びも出てきます。口に入れることが多いので洗ったり消毒したりがしやすいものという配慮も必要です。小さいものは飲み込んでしまわないよう注意しましょう。 1歳以降
あんよがはじまり、指も上手に使えるようになり、おしゃべりもさかんになります。積み木、ブロック、ぬいぐるみ、押し車、絵本と種類がひろがります。お子さんの性格、環境を考慮してふさわしいおもちゃを選んであげてください。

住居・環境について

①赤ちゃんの衣服
   A 発達や発育にあっていること
   B 動きやすさ、着せやすさ
   C 素材の丈夫さ
   D 吸湿性
 など赤ちゃんの状態に合ったものを考えて購入しましょう。
②夏の冷房
室温はお母さんが快適に感じる温度で、子供がゆったりと機嫌よくすごす環境を見つけましょう。「冷房はからだに悪い」との考えもありますが、適度につかえば快適な夏をすごせます。室温を調節することも大切ですが、汗ばんだ肌着をこまめに変える心配りが大切です。
③冬の暖房
衣服にもよりますが、室温は22〜23度くらいが適当と言われ、温度だけではなく湿度にも注意しましょう。電気毛布や電気カーペット、あんかなど直接からだに触れる暖房器具はなるだけ避けましょう。暖房器具によるやけどにも気をつけることが大切です。
④喫煙
妊娠中は禁煙していましたが、出産後再びたばこをすいはじめました。というお母さんが時々います。喫煙は百害あって一利なしで、家族のために禁煙すべきです。たばこは吸う人にとって有害であることはもちろん母乳への影響もあり発育中の子供に対して悪い影響をもたらします。たばこを吸う本人が吸い込む「主流煙」より周囲の人が吸い込む「副流煙」のほうが有害いわれています。先ほどお話しましたが、乳幼児突発死症候群の発生率が高くなり気管支炎、喘息におかかりやすくなります。あと乳児が誤ってたばこを食べてしまうという誤飲事故も多いです。食べた量によっては胃洗浄をしなければなりません。

絵本について

赤ちゃんは絵本に書かれている絵や言葉の意味がわからなくてもお父さんやお母さんが読んでくれる声はわかります。4,5ヶ月くらいになったらいわゆるファーストブックとよばれている赤ちゃん絵本を読んであげてみてください。また、字が読めるようになっても読んでもらう意味は大きいのです。また、絵本は楽しいということが絶対の条件です。幼児教育、早期教育の手段として絵本を与えないようにしてください。子育ては毎日単調なことの繰り返しのようにも感じるでしょうが実は毎日毎日が親にとっても子供にとっても新しいことの積み重ねです。そんな毎日の中でお昼寝や就寝前に絵本を読む習慣をつけることをおすすめします。